(1)割れる定義 「通貨と同等」米は柔軟対応

from:カテゴリーなし|2015.12.2

(1)割れる定義 「通貨と同等」米は柔軟対応
2015/11/30 3:30日本経済新聞 朝刊

 国内で仮想通貨を規制する法案づくりが大詰めを迎えている。仮想通貨は国や中央銀行が発行に関与せず、民間の暗号技術を基に作られた電子データに価値を持たせたものだ。600種類以上あるといわれ、最大規模のビットコインは全世界で1千万口座を超える。従来の法律の枠内に収まらず金融秩序に揺さぶりをかける仮想通貨。初回は定義をめぐる日米政府の姿勢の違いを紹介する。

 昨年2月末に大手取引所の「マウントゴックス」が破綻し、国会でビットコインの法的な性格が議論された。円やドルなどと同じ「通貨」なのか。議員の質問に政府は「ビットコインは日本円を単位とする本邦通貨でも外国通貨でもない」との答弁書を出した。

 通貨とは法律で強制通用力を与えられたもの(法定貨幣)だ。支払手段として受け取りを拒絶できない。日本銀行法は日銀発行の銀行券が「法貨として無制限に通用する」と強制通用力を認め、民法上も通貨とは強制通用力を持つ貨幣(硬貨)と日銀券(紙幣)だと解釈される。「政府答弁はビットコインは強制通用力がないから通貨ではないと法律の文言をなぞったにすぎず、解決になっていない」と金融法制に詳しい遠藤元一弁護士は指摘する。

 一方米国は不正防止や利用者保護のために規制する現実路線をとり、結果的に仮想通貨の普及に役立っている。米財務省は2013年に仮想通貨を「強制通用力を持たないが現実の通貨と同等の価値を持つ」と解釈。ビットコインを事実上の通貨と認めた。

 「流通性があり、決済手段として広く使われているなら通貨として認めるという考え方は柔軟で実用的」と、仮想通貨に詳しい国立情報学研究所の岡田仁志准教授は評価する。

 関係機関は臨機応変に対応。日本の国税庁にあたる米内国歳入庁(IRS)は仮想通貨を「資産」とみなす指針を公表し所得税の対象とした。米商品先物取引委員会(CFTC)は「商品」として扱い、米証券取引委員会(SEC)は証券に近いものとみなす。岡田准教授は「既存の法規制を合理的に適用する米国に学ぶ点は多い」と話す。